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「業務提携契約書」や「業務委託契約書」の合意管轄について
企業と企業の間で、継続的な取引を始めるにあったて、契約書が必要になることがあります。
たとえば、ある会社から継続的に仕入れをするような場合や、ある会社に継続的に発注する場合などです。
その場合、「業務提携契約書」や「業務委託契約書」などが必要になります。
「業務提携契約書」や「業務委託契約書」などで基本的な取引条件を決めておくことは、取引上のトラブルを防ぐ上で極めて重要なことです。
その際に注意しなければならないことは、その取引の内容によって変わってきます。とはいっても、どんな取引でも問題になりやすい注意すべき事項はあります。
そのひとつに、「管轄裁判所について合意する場合の注意点」があります。
「業務提携契約書」や「業務委託契約書」などでは、
「この契約に関する紛争は○○地方裁判所を第一審の専属的合意管轄とする」
と最後に記載することが多くあります。
「管轄裁判所の合意」といいますが、この条項はどういう意味でしょうか?
この条項は、実際に取引上トラブルになったり、裁判になってしまった場合に、大きな影響がでてくる条項です。
ここでは、東京の会社(A社)が熊本の会社(B社)に対し、自社の商品を継続して販売するということで、取引基本契約書を作成する場合を例に考えてみます。
このような取引でどのようなトラブルが想定されるでしょうか?
想定されるトラブルは色々ありますが、たとえば、A社がB社に納品した商品についてB社が代金を支払った後に、商品に欠陥があることに気づき、B社がA社に対し代金の返還を求めるというトラブルが想定されます。
このような場合、商品に欠陥がなければA社としては当然、返金を拒絶することになります。その場合、まずはB社との裁判を避けるために交渉をすることになりますが、交渉が決裂した場合はB社がA社に対して訴訟をしてくるかもしれません。
このとき、もし「管轄裁判所の合意」がなければ、東京の裁判所でも熊本の裁判所でもいずれでもよいことになることが多いです。
そうすると、熊本の会社であるB社が東京の裁判所を選ぶことは考えにくく、熊本の裁判所で訴訟を起こすでしょう。
すると、A社の弁護士は、原則として裁判の際は熊本の裁判所に行かなければなりません。裁判のたびに弁護士費用が多額になるという問題点が出てきてしまいます。
これが国内だけの話でなく、海外の会社との取引となると企業にとっては存続にかかわる大きな負担となってしまいます。
ところが、このケースで、「取引基本契約書」に「この契約に関連する一切の紛争は東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄とする」や「本契約に関する訴訟の第一審の専属的合意管轄裁判所は、甲(乙)の本店所在地を管轄する地方裁判所とする。」などと記載しておくと、B社は東京でしか裁判を起こせなくなります。
このように「管轄裁判所の合意」は実際に裁判になったときには、企業の負担や実際に裁判することが可能かどうかに大きく関わってきます。
また、裁判にならなければ関係がないのかといえば実はそうではありません。
裁判になれば多額の費用がかかることが予想されるようになっていれば、「なんとしてでも裁判を避けたい」となり、裁判前の交渉でも条件を飲まざるを得ないケースが多々出てきます。
このように「管轄裁判所の合意」の条項はものすごく重要な条項です。
インターネットでよく目にするひな形の契約書には、この重要な「管轄裁判所の合意」の条項がないものもありますので注意が必要です。
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